クェーナについて

クェーナとは沖縄諸島に伝わる古謡の一つ。いつ頃から歌われたか定かでないが、16~17世紀に成立した「おもろ御さうし」には『くわいにや』として登場する。
男性が歌唱するアマウェーダなどのクェーナも一部地域には存在するが、その多くは女性による祈りの歌である。航海安全をはじめ、建物の造営や衣服の織り方などを詳細に描写し“こうでありたい”という願望を歌に乗せることで、将来の平穏への思いを託した。歌に合わせて簡単な所作があり、儀礼の場を首里では踊合(ウドゥエー)と言った。

首里はクェーナの本場であり、首里から地方へ伝わった例として伊江島のアヤメ歌がある。明治頃までは旅祝や見送り歌が盛んに唄われたが、兵隊送りでも用いられ戦後は歌われなくなった。
音楽研究家の山内盛彬氏が大正時代、尚典候夫人の野嵩御殿にクェーナ音取役であった神村氏らを紹介してもらい、その旋律を五線譜に記録していたが、これを山内夫妻が1960年以降コザの婦人たちに指導して舞台上で“復活”した。
首里クェーナ保存会はコザの宮平ミツ氏らの指導と、首里出身東京在であった見里春氏が1976年に作成した本「踊合―首里の旅うた―」と附録レコード音源を元に稽古し、1989年11月3日首里城正殿起工式に際して結成された。
2012年度の首里城公園新規催事制作事業によって『聞得大君の御新下りのクェーナ』を歌唱録音し、以来同会が歌い継いでいる。

文責 山内盛貴 2018年7月18日作成

参考文献︰見里春「踊合―首里の旅うた」1976 見里春 pp.54
     山内盛彬「山内盛彬著作集」第二巻 1993(1964) 沖縄タイムス社 pp.616

参考パンフレット︰山内盛彬「古典と国際化の民族音楽発表会」1960 沖縄タイムス新聞社

晴明祭 催事

「命は一代、楽譜は万代まで」

遠い昔、一人の音楽家が琉球の神女ノロ達が謡う祈りの唄クェーナを記録したいと試みた。しかし「男子禁制」を理由に門前払いを喰らう。諦めきれない音楽家はノロの集会場の床下に潜り込み、ろうそくに火を灯し一晩中頭上で繰り広げられるクェーナの旋律を自身の音感のみを頼りに採譜した。そしてそれを五線譜に記録し後世に伝えた・・・。

琉球音楽研究家・山内盛彬とクェーナに関する逸話である。琉球古典の伝承に生涯をかけた盛彬の尋常ならざる情熱を如実に表わしている。「男子禁制」「門外不出」とされたクェーナはその神聖さ故に公に伝わることも無く、琉球処分という時代の渦の中で消滅しようとしていた。それを若き音楽家は見過ごすことができなかった。同様、王府おもろや湛水流、幻の宮廷音楽といわれる御座楽・路次楽も盛彬が自身の使命とし記録採譜したからこそ今日の我々に伝わっている。

西洋音楽を出自としながら、どんな時も故郷沖縄の音楽を忘れなかった。「命は一代、楽譜は万代まで」と妻ツル媼とともに若い頃より世界を飛び回り、あらゆる民族音楽を吸収し沖縄に戻ってきた頃には齢80を過ぎていた。

沖縄本島のちょうど真ん中辺り、かつて「コザ市」と呼ばれ現在は「沖縄市」となった地に一つの歌碑がある。刻まれた歌は「ひやみかち節」。盛彬翁によって1948(昭和23)年に作曲されたこの島唄は、沖縄戦で焦土と化した沖縄の人々と鼓舞し励まし続けた。長い音楽旅行を終えた夫妻が身を寄せたコザ市の老人ホームには盛彬を慕って沢山の音楽家が訪れたという。当時の職員に盛彬はよく「施設でピアノを買いなさい。ここを音楽の殿堂にしよう」と話していたという。残念ながらピアノの購入は叶わなかったが、音楽への情熱が覚めることのない盛彬はよく近隣のピアノがある家庭に赴き音楽活動を続けた。当時の職員が後に「あの時ピアノを購入していればもう100や200の名曲が誕生していたかも」と言ったのも大げさではない気がする。「ひやみかち節」の歌碑はその老人ホーム・緑樹苑の中庭に盛彬の生誕120年を記念して平成23年に建立された。歌詞とともに五線譜で刻まれた旋律が「命は一代、楽譜は万代まで」のその言葉通りに今日も残然と沖縄の空に響き渡る。

山内盛彬伝承楽曲保存会
事務局長
キンジョウカズロウ

ダンジュ嘉例吉かりゆし:五線譜
ダンジュ嘉例吉かりゆし:歌詞

歌唱:見里春 採譜:山岸磨夫

保存会の活動について

3月
那覇市文化協会 あけもどろ総合文化祭 琉球王朝禮楽部会 踊合
6月
平和を祈念して奉納演奏(平和祈念平和堂於)
11月
琉球王朝祭り首里 古式行列に参加出場
12月
首里城への美御水(ヌービー)の奉納祭
円覚寺総門前で奉納儀式を行い、城内御内原まで献上ウスネーイを行い、若水を献上
首里公民館での稽古
催事前の御願
首里公民館で集合写真

沖縄タイムスに活動が掲載されました

沖縄タイムス 2018年7月13日

首里クェーナ保存会(玉城弥生会長)はこのほど、祈りの際に歌われていたという古謡、クェーナを伝承しようと17曲を収録した2枚組CD「首里のクェーナ 踊合(ウドゥエー)」と、楽譜と歌詞を掲載した教本を制作した。県内学校など公的機関に寄贈する。 同保存会は首里城正殿復元に合わせ、1989年に発足。
女官たちが儀礼で歌ってきたというクェーナを継いできた。今回、CDを100セット、教本を500部制作して、県内各地で寄贈している。
玉城会長は「クェーナを聴くと組踊や古典音楽の源流を感じ取ることができる。多くの方に知ってもらいたい」と語る。
同保存会顧問の平良哲也は「琉球芸能の神髄は神事にあると思う。芸能の在り方を考えるきっかけにしてほしい」と呼び掛けた。
CD、教本ともに非売品。問い合わせは同保存会。

新聞掲載:首里クェーナ保存会玉城弥生会長

※CD、冊子の個人の受付は有料になります。
お問い合わせは 井上まで

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